ストローでお味噌汁、のおもひで。

雑音生活

ストローでお味噌汁、のおもひで。

小さい頃、
空を泳ぐこいのぼりが好きでした。

自分、小さいながらも、
なぜ、こんな大仕掛けな事をたった数週間のためにするのか、
そのあたりがとても謎だったけれど、
ひな壇に飾られているお内裏様とお雛様その他もろもろが、
ホラー以外の何ものでもなかった事が、
いいなぁこいのぼり、
に繋がった原因のひとつだとは思います。

こいのぼりを見ながら、わたしは思ったのだ。

こいつにうまいこと乗れたら、空を飛べるんじゃないか、と。

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高い所からジャンプすれば、しっぽが掴めそうだった。
絶対にいけると思った。

こんな時、わたしはいつも忘れるのだ。

自分が、どちらかと言わなくても、運動音痴だと言う事を。

 

ええ、ジャンプしました。

そのまま、見事に落下しました。

落下する時に、足を何かに引っかけて、ひじから落ちたんです。

 

空を飛べるかなぁ、という淡く高ぶる気分から、
自分、マジひじ痛え
になるまで、1分もかからなかったと思います。
身体も心も急降下でした。

 

ひじの、3本の骨がくっついてる部分(まさしくひじ、ですね)が、
衝突の衝撃で一回全部外れ、
外れた状態でちぐはぐにくっつきそうになっており、
そのうち1本にはヒビも入った、
複雑骨折という診断でした。

これを治す為に、
まず3本の骨を引っ張って離し、その間にヒビを完治させる、という方法が取られました。

そのため、
利き腕を天井に向けて吊り上げられたまま、起き上がる事さえ出来ない、
という入院生活がスタートしたのでした。

つまり、プチ寝たきり生活、です。

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ほんの少しだけなら、上半身を起こしてもいいと許可されましたが、
正直、トイレも行けませんでした。
利き腕をやってしまったので、
文字はおろか、絵を描く事も満足には出来ませんでした。

だから、寝そべりながら本を読み続けました。
それぐらいしか、ひとりで出来る事がなかった。

 

食事は、いつも母親がフォークやスプーンで口に運んでくれました。

その時に、
お味噌汁が飲めない事に気がついたのです。

わたしが寝ている以上、スプーンで口に運んでもらっても、こぼれてしまうのです。
レンゲでも、同じ結果でした。

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母親は、
さして美味しくもない病院食だけど、
お味噌汁が大好きなわたしに、
飲ませてあげたいと思ったのでしょう。
ある日、ストローを買って来てくれました。

わたしは「なんと画期的か」と嬉しくなって、
鼻息荒く、お味噌汁をストローですすりました。

 

まずね、
わかめとか豆腐がね、詰まりました。

そんでそれを力一杯すすったら、
喉の奥を火傷しました。

しかもね、
みそ汁をストローで飲むと、これまたまずいです。

なんというか、
そうですよね、ストローで飲むべき物じゃないですよね、
って思い知らされた感じです。

でも、腕を吊られていた間は、ストローで飲み続けました。

わたしの、ストローの甘く切ない思い出です。

 

もしも、
こいのぼりに乗れたら空を飛べるかなぁ?って子供が言い出したら、
入院する事になるよ、って、
そう天野が言ってたって、
教えてあげて下さい。

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