歌心がない。
かつて良くそう言われてきました。
君は曲が出来上がった瞬間が満足度のピークでしょ。
だから、歌で曲を伝えようという気持ちが薄い。
本当に良く言われました。
デビューするかしないかぐらいの頃。
何を歌っても声が変わらないシンガーはたくさんいるけれど、
わたしはそうではないタイプ。
曲によって声の出し方が変わらない人、
そのブレなさにひどく憧れますが、
どうやればブレずにいられるのか、わたしには分からないのです。
音色ひとつ違えば、わたしの声の出し方も変わる。
あたたかいピアノならあたたかく。冷たいピアノなら冷たく。
ひとつの反応なんですよねこれは。会話のキャッチボールみたいな。
かといって、声質そのものががらっと変えられるわけではない。
変幻自在の7色の声とまでは決して言えない。
こういう人間は、器用貧乏と言われます。
どうしても自分の声と合わない(と自分で思う。違和感というか)曲があるのも確かだけど、
わたしは自分の声の変化をひとつの持ち味と捉え、
そこを自分でも楽しんでいるタイプです。
アレンジは、歌詞とメロディに寄り添って作られてる。
であるのならば、
そのアレンジに寄り添い、溶け込んでいたい。
わたしは曲の中で、浮きもせず、沈む事もなく、共生していたいのです。
どうしてもこの声で録ってほしいのだという場合は、
アカペラで自分の喉の使い方をチューニングします。(こういう場合は、楽曲の中で、どんな音よりも声が主役にならなければ成り立たない時)
声のチューニングは、
ギターリストが、
アンプやエフェクターのつまみをいじって音を決めていくのに、少し似ている気がしています。
わたしが聞かせたいのは自分の歌声じゃなくて曲の世界観。
わたしが信じているのは自分の歌声じゃなく楽曲そのもの。
そこがブレないんだろうな。
ということは結局あれかな、
かつてデモテープ完成がピークだったのが、
ちょっと成長してレコーディング完了まで引き延ばされただけかな。
という事は、やはり歌心はないのか。
ふりだしに戻ってしもた。ああ無限ループ。